タイトルは編集上の要請かアイデアによるもので、本の中身は、あくまでも戦後50年間に亘る同世代詩人論。あくまでも戦後詩論であり、詩の戦後史でないことを、著者自身、予め断った通りの仕上がりとなった。それもその筈、自らも渦中にある詩壇は横断的にしか概括出来ないのだから。
「荒地」から、ポスト・モダンまでを一括りすると、丁度、この50年間に納まる。我国の伝統的詩歌を飛び越えて、世界を一望に見渡す詩の河口に出たと言うべきか。類書を圧して、示唆に富んだ整合性のある詩論を展開、北川透「詩的レトリック入門」に劣らぬ迫力がある。
現代詩が現代詩たりえた所以は、一方で通俗化を匂わせながら隠秘主義に徹したこと、とりわけ、詩が詩自身を思考する「メタ詩」があったことによる。文壇からは継子扱いにされ、大衆からは孤立していながら、良くも悪くも、今日的な話題の中心にはいつも現代詩があった。
吉岡実、田村隆一、飯島耕一、等を戦後第一世代、平出隆、稲川方人等を第二世代として位置づけ、女流詩人からは吉原幸子、伊藤比呂美等を紹介。これら錚々たる顔ぶれがよくもまあこんなに身近に感じられるものだと著者の筆力には改めて驚かされもする。これで現代詩もやっと本筋の処で解りやすくなった。
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