トップページ
 古本ショッピング
 書評
 通信販売法に基づく表記
 お問合せ


 

 


日付:

2012/04/28

タイトル:
ハイドラ
著者:

金原ひとみ 

出版社:

新潮社

書評:


  「またか」― くらいの反応はある。だが、もう不細工美人の奇妙なネーミング癖には惑わされまい。「ハイドラ」はヒドラ(蛇女)の別称なのかも知れないが謎解きのキーワードとしてならトンと興味が湧かない。芥川賞最年少受賞者で高度な職人芸を披露したものの、レビュー後の第一作「夢に与える」で、「まさか」の無様な死態で浅瀬に乗り上げたのは綿谷りさだったが、同時受賞で話題を呼んだ彼女も数年後にはこうして同じ徹を踏む。確かに当時の著者には異能の閃きがあった。いっとき、未完の大器的な期待を抱かせはしたものの、自意識過剰が災いしてか、年次毎の生真面目な創作活動は元々想像力の所産とは言い難い私小説世界の閉塞感を深めるばかり、「AMEBIC」「アッシュベイビー」等など、意気揚々のタイトルも情況打開の突破口どころか、今となっては発信地不明のSOSとしてしか記憶に残らない。文壇の公器が何故かくも不毛な登竜門となってしまうのか。その後のランボーは<醜文の弊害>で、ランボー以降は団栗の背比べでしかないからなのか?ちなみに、三島由紀夫やら池田大作のビッグ・ネームに振り回されて、戦後純文学の宝庫とも呼ばれた新潮社も近年頓に無残な荒廃振りを露呈するに至っている。編集者諸氏のチンケなベストセラー工作によせる諸先生方の気概のなさ、ないもの強請りの気の遠くなるような蒸し返しでは当然の帰結だろう。戦後思想の最後の巨匠・吉本隆明は臨終に際してすら健全な批評精神を貫き、<近頃の文壇は無だ>と悲痛な声を漏らしたようにさえ思う。さあ、みんな、もう何を言っても始まりそうもない。イ・サン、トンイ、ケベク、字余り厳禁、この三字成句が感動を呼ぶ。日曜日の夜は灰ドラならぬ韓ドラ・王朝シリーズでも楽しもうよ。


 

 

 


全目録 海外文学 日本文学 芸術・デザイン 宗教・哲学・科学 思想・社会・歴史 政治・経済・法律 趣味・教養・娯楽 文庫・新書 リフォーム本 その他