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日付:

2012/12/05

タイトル:
博士の奇妙な思春期
著者:

斉藤環 

出版社:

日本評論社

書評:


  

  こりゃいかん。またおでぶちゃんとご対面である。朝までテレビやなにやかや出突っ張りの芸能人は論外として、いまや、どのテレビ局も、横並び太閤様で箔付け。たかが舌だし人形じゃないか。但し、池上さんは除く。机上の空論もメディアでは正論。「脳なんてものがあるにも拘らずものを見るのだ」と西欧風観念論にケジメをつけ高邁な自説を悉く撤回し、晩年は持ち前の鑑識眼で日本古来の伝統芸に身をやつしたのが小林秀雄である。モシモシ亀よ、茂木さんよ、とうの昔に匙が投げられた賽の河原の砂山にお子様ランチ風の旗を立て、なにをぶつくさ御託を並べてるの。ガラパコス島の生き残りの住民にしてはまあ何とか上等の部類ではあるのだが。

 さてさて、この「アニメおたく論」、斉藤環、お前もか!という気がしないでもない。いつお声がかかるものやら。オカルト顔負けのユングの学説やフロイトからラカンまで、未だにアカデミーでは肩身の狭い代物。と言いつつ、些か詮索が過ぎるぜ、ちとムカデが走るぜ。まず用意周到な「おたく化」のテーブル・マナーがあり、積読先生よろしく、持病の造語癖で使いみちのないメスばかり並べて悦に入っている。わからんな〜。さっぱりわからん。ついでにこいつもわからん。領海侵犯的な妖しげな文学論、所詮、お節介な幻像ではなかったか。どの道ゆこうがいつか来た道、電信柱に犬の小便、行間が寒いのなんのって、ミミズ腫れだよミミズ腫れ。そんな文脈にギブスを宛てて一体どうしょうというのだろう。えっ!スーパーフラット? お前さんのオツムがかい?

 いわゆる渋谷系、原宿系、池袋系はアンチ・おたく族。作者の<おたく思い入れ図鑑>には、キャラ萌え、キャラ立ち、位相系、ショタ、なんとかかんとか、ボケスキ(間違ったかな)なんてのもある。これはもう針小棒大の博覧強記のオンパレードとしか言いようがない。しかも、ええい面倒とばかり「解離」一本で切り捨ててしまうのだからわけがわからない。何はともあれ、さあ、みんな集まれへんてこりん島へ。虎穴に入らずんば虎子を得ずの潜入取材は見上げたものだが、こんなのが伝家の宝刀では竜女の変成男子も形無しというものだ。ゆくあてもない駅へ、地図にない町へ、パンチで穴の空かない固い切符のような、本書の学説自体が「解離」現象なのだと私は思う。



 

 

 


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