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日付:

2006/10/20

タイトル:
ハリウッド 良心の勝利
著者:

山田和夫

出版社:

新日本出版社

書評:

 


 或る陰謀史観によれば映画産業は3S政策のひとつ。スクリーンでの絵空事が政治活動に巻き込まれ、いつ何時、本物の血を流すことになるやも知れぬ。富と名声を欲しい侭にしたスーパースターが、一朝にして奈落に突き落とされる事件など珍しくはないのだ。そんなハリウッドには20世紀の顔半分を容易く書き変えるだけの危険な力が潜んでいる。波乱万丈のサクセスストーリーからは、自由の国・アメリカの意外な側面もまた浮かび上がる。ちなみに、喜劇王・チャップリンの、あの底抜けの笑いが、命がけのパフォーマンスであったことは余り知られていない。それも栄光と悲惨が隣り合わせの、レジスタンスによる「良心の勝利」である。そう改めて認識すると、現実の厳しさに愕然とせざるを得ない。
 
 この不夜城に忍び込む悪夢の最たるものに、かつては支配者層による赤狩り、今では絶えず脅威に曝されている大資本による買収の脅威がある。二枚目スターで一世を風靡したゲーリー・クーパーは実生活上も正義漢で屡、危難に逢い、ハードボイルドで勇名を馳せたハンフリー・ボガードは現実肌の割りきりで狡猾に立ち回った。ハリウッドの舞台裏はスクリーン同様、危険が一杯なのだ。

 しかし、なにはともあれ、ハリウッドのコンテンツは不滅である。キラ星の如く登場するキャラクターにも事欠かない。ハイテクによる画一的なデジタル化の波にも抗して、ハリウッドは不死鳥のように蘇る。闇が深いからこそ、その輝きも大きい。荒廃した資本主義社会にあって、唯一、魂の再生工場と言えるのかも知れない。著者は興味深いエピソードを交えながら娯楽の殿堂、このエンターティナーのメッカに就いて熱っぽく語っている。
 

 


 

 

 


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