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日付:

2004.11.12

タイトル:
石の扉
著者:
加治将一
出版社:
新潮社
書評:

 

 キリスト教のグノーシス的解釈によれば、神の歴史も古代エジプトに遡らざるを得ない。この本の著者はエジプトのピラミッドを儀式空間と定義することでフリーメーソンを想起し、様々な事実関係を整理しながら、世界最大と言われる秘密結社の謎を解き明かしてゆく。

 神か悪魔か?と世情を湧かせた「テンプル騎士団」に就いての解釈も当を得たもので、従来の物語風に記述された文献がいかに実像を歪めていたかが分かる。必要不可欠な事柄に即して推理を働かせれば事実はこんなにもシンプルで動かし難い。

 それにしても、組織を維持する為に必要だった秘儀が、怪物的様相を呈するに到るのだから、猜疑心と言うもの、これはこれで、別種の驚きである。潜在的なパワーがじわじわとメディアを蝕んでいたことになる。

 しかしながら、フリーメーソンの世界正史に果たした役割は測り知れない。そのことを著者自身些かも否定するものではないが、怪しげな地下組織やカルトに結びつけられ、跳梁跋扈する陰謀説は、いかに秘密結社であろうと、甘受するわけにはいかない、と筆を擱いている。

  ともあれ会員相互の信頼感と著者の熱意によって、この本が生まれたことを思えば、私たちの常識的な見解に、ほんの少し正義を付け足すこと位、何でもないことだろう。

 蓋し、世界統一原理としての帝王学と、人類救済に関する神の摂理とが、本源において相容れないものだとしたら、私たちの歴史はどんな答えを用意しているのだろうか?−それこそ、この本の頁の余白に夫々が書き込まねばならない宿題である。

 

 

 

 

 


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