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日付:

 

2007/03/25

タイトル:
環境問題のウソ
著者:

池田清彦

出版社:

筑摩書房

書評:

 

 今を時めく<地球温暖化>問題も、高々四半世紀のスパンなら、別段、騒ぎ立てることもなかろう、と言うのが本書のスタンス。何事につけ、問題そのものが問い直されなければならない磐石の時と言うものはある。人間の事業も悠久の歴史の中のほんの一齣。そのワンシーンの演出に長けたものが天下を取る。環境問題もその書割の一つ。舞台の筋書き次第でどんな風にもなる。権威筋によるお墨付きとマスコミ操作で、臭いものには蓋の拝金主義が我が物顔にのし歩く。その一方で、尤もらしい仮説が水を得た魚のように泳ぎ回る。奇妙な問題の摩り替えで我意を得た一握りの人士たち、眼のつけどころはシャープだが、俄仕込みの科学的迷信と呼べそうな代物ばかりだ。しかるに、ここぞと逆ねじを食わせたはよいが、弾き飛ばされた識者の数も半端ではない。つい最近、「不都合な真実」という本が出版され、「こんなゴア氏だから大統領にはなれない」等とオマケ付きの賛辞で話題を呼んだ。通説に反してけしからんと言う痛切な風刺だ。しかし、本自体の宣伝としては凄みがあってよろしい。「情報ハイウェイ構想」から5年、何かeコマースにのっぴきならぬ亀裂が走り、ヒル&トウーの離れ業でもやって退けたのか?

 それは兎も角、CO2・灼熱地獄説のナンセンスを、いち早く察したアメリカは子供騙しの「京都議定書」にサッサと訣をまくってしまった。寒さに縮かむ手に息を吹きかけるだけで、温室効果があるなら暖房要らずである。一万年サイクルの間氷期に偶々巡り逢えた人類だが、それをしも、我々の吐く、CO2のお陰とは誰も思わないだろう。マクロとミクロへ開かれた限りない眼が、現実には在りもしない恐怖を煽り立てる。科学的一歩へのご祝儀と言うわけだ。

 悪名高い「ダイオキシン法」しかり、農薬撒布被害から飛び火した、これも立派な人災である。「外来種問題」にせよ、「自然保護法」にせよ、誰のため、何のためなのかを改めて問い直さない限り、舵取りを誤ってしまう。生態系のホメオパシーは、人智では計り知れない。統計のウソはおよそ自然の親和力とは無縁のところにある。生産者(植物)〜消費者(動物)〜分解者(細菌)のサイクルに謙虚に立ち会うことでしか科学の進歩は望めないだろう。著者は科学の本来性を歪め続けて来た、資本主義社会の奥の院に単身分け入り、今世紀最大のタブーに挑戦している。
  

 

 

 


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