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日付:

 

2008/8/6

タイトル:
マス・ヒステリーの研究
著者:

角間 隆

出版社:

角川書店

書評:

 

 

   代表制民主主義には思わぬ落し穴があって、或る一定期間を過ぎると、さしもの政治工作も袋小路に追い込まれざるを得ない。我国の場合は60年周期の制度疲労がそうさせるらしい。この奇妙な社会法則の方程式を解くにあたり代入される数値Xが<独裁>である。なんと言う自家撞着!−民主主義思想が不完全だからこその民主主義政体、そんな同義反復に符牒を合わせるかのような小気味のよい逆説だが、まるで、4年に一度のオリンピックの祭典が15回目毎にパニックを迎える、あの力関係の臨界点のようではないか。著者は愚の骨頂と言わんばかりに現下の小泉政権を扱下ろし、お茶の間ワイドショー化した議会政治を揶揄し、併せてワンフレーズ・ポリチックスの危険性を警告する。一国際ジャーナリストならではの臨場感溢れる手法で古今東西に渉る時代の病根にメスが入るや、かのセイラムの森の魔女狩りから、マッカーシー事件、第二次大戦下のヒトラーの台頭までが鮮やかに甦る。

 そもそもの話、「集団ヒステリー」と言えば破壊の幻想だけが一人歩きする運動の暴民化である。一度、賽が振られてしまうと、あとは野となれ山となれ、暴徒の火炎瓶か軍靴の響きか、時代のトレンドはどちらかに傾く。
 100年に一度の天才と、あと40年待てなかった出来損ないのペテン師、今日も何処かの暗い歴史の酒蔵で樽を叩く音が響く。

 
  

 

 

 


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