スピリチュアリズムは哲学でも宗教でもない、フィクションというわけでもないから比喩やレトリックとは無縁である。その言説が冗談やこじつけめいて聞こえても、事実をして語らしめるれっきとした科学の世界である。ご存知、何かことあるごとに、ご説ご尤もの白峰由鵬・風水師。この人、生硬な学術上の重要単語を手懐け有効活用し業界用語として定着させた功績は大きい。まことにもって神出鬼没、瘋癲の寅さんよろしくひょいと現われては処かまわず一くさり。師曰く、天はTENでNETのアナグラム、これはインターネット上ではロゴスの領域。その一方、天は点で宇宙の中心、自我即宇宙となるらしい。この厳粛で滑稽な定理はほんの前口上。古今東西の言語群を巻き込み、換骨奪胎して自家薬籠中のシステムに組み込む、魔迦不可思議な言霊の乱舞にはいささか度肝を抜かれるが、この人以外には誰もコンクラーベが日本語で<根競べ>等とは思いも拠るまい。一事が万事、こんな具合に面白まじめなぶっ飛び解釈の世界だから読み出したら最後やめられない。
今回のテーマは、As Above So below [上の如く 下も然り]、本編を貫くこのキーワードを合言葉に、竹馬の友ならぬ前世の宿縁で相会し意気投合した本邦スピリチュアル・ワールドの御三家が、今をときめく霊能者・エハン・デラヴィ氏を招いてのハチャメチャ・トーク。とりわけ圧巻なのは、西欧中世の暗黒時代以来、近・現代の偉人・哲人に至るエリートを悩ませ続けた<錬金術の奥義>にふれて三者三様のアプローチを試み一応の回答を得たことだろう。ややこしい数秘術をあれこれと弄繰り回し、シャーマニズムを理論的支柱としてナンバーワンならぬオンリーワン・日本で気炎を上げるや宴たけなわとなる。フォトンベルトとアセンションが2012年に直面する現実的な最重要課題だが、この未曾有の難題をクリアーする能力やノウハウとなると途端に口を噤む。無理もない、修行は悟りの因ならず、生まれで決まっているのだ。五次元予備軍のリストに、あなたや私の名前が書かれているかどうかはわからないなどと嘯く。そこはせめて天真爛漫な師のひそみに習い健康な食生活の実践だけは我が物とすべきであろう。
さて、蛇足ながら一言、故郷のオアズの流れを前にして、泣きながら黄金を見たが、飲む術はなかった。とランボーは詠った。あれから200年は経ったろうか。本書でエハン氏はさりげなく悲願の成就を語っている、―「ある日本人技師が黄金を水に溶かす技術を発案した」と。これは大変な驚きである。秘法ではなく万人共通の財産となる技術によって不老長寿の霊薬が誕生したのだ。
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