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日付:

2005/09/07

タイトル:
日本を国家と呼べるのか
著者:
村松 剛
出版社:
PHP研究所
書評:

 

 混迷の度合いを深める世界情勢を分析し、日本の将来を、どう国際関係に位置づけねばならぬかを、歯に衣を着せずに語った憂国の書。

 国家論の大方が国家幻想論に終始する昨今、敗北を裏返しに着込んだパジャマ姿の平和主義では何も解決しない。寧ろ、戦後半世紀に跨る思想上のトラウマは、人心荒廃の元凶ともなっている。無意味なお呪い程、催眠効果があるものらしい。名医の手になるこの良薬、少なくとも眠気覚まし位にはなるだろう。

 「威嚇を大にして平和論を効き目あらしむべし。」−戦中のトップの気概溢れる訓戒が良いとか悪いとかではない。ただ、建国精神の権化である現人神にしろ、戦後民主主義の象徴天皇にしろ、裸の王様では困るのだ。

 この本の著者は湾岸戦争が日本国自立の試金石であったと述べている。このままでは日本政府は商法支配所に過ぎず、先進諸国と肩を並べるためには、一日も早く保護国の汚名を返上しなければならないと言う。脳ある鷹は爪を砥ぐ、片手に刀、片手に憲法という訳か。月光狂いに刃物の先例もある。それに、レシピを頼りに、大根を切るには長過ぎはしないか。

  ちなみに戦後も敗戦続きというのが著者の持論。しかし、太平洋を負けっぷりのよさで大円卓とした。白刃がざわめくのも波打ち際だけで良さそうだ。

 その当否は兎も角、「愛国心」と題した辻まことの散文詩はどうだろう。

 「悪質きわまる虫。文化水準の低い国ほどこの虫の罹患者が多いという説があるが、潜伏期の長いものなので、発作が見られないと、罹患の事実は解らない。心臓に寄生するというのも、解剖学的に証明されたわけではないからなんともいえない。過去にこの島では99%がこの発作による譫妄症状を呈したことがある。死ぬまで治らぬ後遺症があるから、現在、この島の住民は、その健康を信ずることができない。」

   <鳥獣図譜>より  昭和39年・刊

 

 

 

 


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