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日付:

 

2008/2/19

タイトル:
「NO」と言える国家
著者:

原田武夫

出版社:

ビジネス社

書評:

 

  海の向こうで「NO」と頚を振ったばかりに失脚した橋本総理。同じ「NO」でも内弁慶の慎太郎都知事なら幾らでもボリュームを上げられる。戦後漸く半世紀を経た我国は、どうやら合点のいかない問題を抱え込んでしまったらしい。著者は有能な外交官として将来を嘱望されながら、あえて要職を辞してまで、この難問に拘り、国政レベルでのタブーに挑戦した。本書「NOと言える国家」はその試し切りだが、まあまあの切れ味であろう。我国の情報リテラシーの先駆けとして出色なばかりか、今のところ、当該シンクタンクの信憑性を凌駕する同業他社はあらわれまい。資本主義社会の縄張り意識と武装国家の覇権争いは諸民族間の業のようなもの、今日日、シッポを巻いた負け犬の遠吠えは波打ち際で掻き消されるだけだし、砂を掻いて鼻を沈めても、滅多なことでは餌にありつけそうもない。そんなわけだから諸君、胸を張れ、胸を! 勲章はなくともよいではないか。

 真に気概溢れる著者である。噛んで砕いて何度も力説する国際関係の仕組み、「マネジャー国家、サブ・マネジャー国家、ワーカー国家」の格付けによる論法は分りやすい。ちなみに米中ニ大国の我国の頭越し外交は今に始まったわけではない。知ってか知らいでか、なんつう一億総働き蜂であることよ。いわゆる我国にとって国富なるもの、子どもの手に余る棒飴のように、神通力で好きなように曲げられてひとたまりもない。太平洋を越えてグローバリズムという怪物が影を落とすのは、日本海の半分までである。中国二千年の歴史は未だに竹薮から抜け出そうとはしないが、日本人は民族としての生い立ちをあっさり捨ててしまった。国家存亡の危機に直面しながら、愛想笑いが切り札では悲しすぎる。わからないことに就いては、誰であれ、良くも悪くも一目置くものなのだ。冷戦後は兄貴分として中国の背丈を充分意識したアメリカ外交である。まだ頚の座らない赤子のような日本に満面の笑みを浮かべて両手を差し出すとは思われない。ソ連の崩壊を横目に見ながら、賢明な努力でみごと祖国復帰を果たしたドイツをモデルに、この<脱ワーカー国家>を提唱する著者は紛れもなく21世紀の憂国の士である。

   



 

 

 

 


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