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日付:

 

2009/4/23

タイトル:
オバマと日本
著者:

鈴木壮治

出版社:

グラフ社

書評:

 今や、アメリカンドリームもオバマ頼み、オバマの夢一色に塗り潰された感がある。勿論、人類の原風景であるアフリカの色だ。演説も良かった。しかし、シーザーの時代ならいざ知らず、名演説家必ずしも有能な政治家とは限るまい。必要条件ではあるが充分条件ではない。モーゼの昔には神託による統治があったが、現代は「神殺し」の時代である。もしかしたら民衆に担ぎ出された金の雄牛かもしれない。

 単なる杞憂に過ぎなければよいのだが、本邦では早くも書店の平台を埋め尽くすオバマ物に、ちらほら暗い影が差し始めた。「責任」も「希望」も原点回帰の決まり文句に過ぎず、この「死語」に渇を入れたところでゾンビしか現れないとしたら? 颯爽と登場したオバマ政権も、知る人ぞ知る、未来志向の利益団体のエージェント。このエコシステムに捉われた瀕死の白鳥の麗姿なら、いつ幕がおりても可笑しくはなかろう。ラザロよ立て! YES WE CAN!! どうしても力まざるを得ない。
  
 本書はアメリカの懐刀に過ぎぬ我国の現状を憂い、オバマ戦略の機先を制するにはどうしたら良いかを指南。環境問題に高度な技術で指導権を得るもよし、核の平和利用も選択肢のひとつ。形振り構わぬ北朝鮮の果敢な自己主張に見習い、米中の頭越し外交を横目に見ながら、一寸法師の鬼退治よろしく大国の盲点に抜かりなく食い入るべし。「パクスアメリカーナ」とは名ばかりの私設国家であり、利権争いのまとまりのない民族が、グローバリズムの動きの中で、図らずもその弱点を露呈したのが格差社会であった。前途多難な世界情勢に直面して改革を叫ぶオバマ新政権だが「核のカード」に変わる外交上の切り札さえあれば日本も棄てたものではない。 

 

 

 


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