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日付:

 

2009/5/1

タイトル:
男のダンディズム
著者:

奥田瑛二

出版社:

KKロングセラーズ

書評:

 

 史上最高のダンディは誰か? 確かそんなテーマのTV番組だったように思う。訳もわからぬ間に哲学者のサィードに決まってしまったが、奥田さん、あなたがその時の司会でしたよね。この本の発刊が2006年、このダンディ・ドクトリンに箔が付くまで少なくとも1〜2年はかかる筈だから、多分、昨年あたりかな。でも、見られたものじゃなかった。勿論、この本だって褒められたものじゃない。喋るだけ面汚し、どころか、詰問でしょうが。自称ダンディは構わないとしても、奥深さとデリカシーに欠けている。ダンディとは存在自体が思想であること、何処にクソするかなんてあなた、幾らなんでも想定外じゃありません?

 孔子は生まれるとすぐ洞窟に棄てられた。親が育てる自信を失うくらい容貌魁偉でしたからね。だが、そんな出自にも拘らずダンディだった。師曰く「美は礼節の影」とかなんとか。素材はどうでもよろしい。五歳の時から俳優を目差したあなたとはそこが違う。あえて定義するなら、ダンディとは歩くだけで空気が変わる人のことです。無関心を装いながらも、周囲をオーラで包みこみ、その癖、遠方に嫁しずく人。あなたの関心は今此処にしかない。全然、ロマンチックじゃない。その上、通俗的で物足りないのは才覚がないからです。下手な鉄砲めく文中に乱発するダンディを、( )( )( )で空にして、もう一度眺め廻したら、それに変わる用語はごまんとあるじゃありませんか。

  ダンディは容姿とか名前のことではありません。無為が神の領域である人は、そんな風に自分を語らない、言葉(=神)があなたを語るのでなければならない。ファンを大事にして俳優に専念しなさい(−かく言う私も何をかくそうあなたのファンでした)。もしかしたらダンディは、織田信長の「うつけ」やハムレットに於ける「道化」の帰結かもしれませんからネ。俳優に専念するというのは、あなたを含めて、この世界が表現の材料になることです。

 

 

 


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