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日付:

 

2007/04/8

タイトル:
プロジェクト・ルシファー
著者:

並木伸一郎

出版社:

徳間書店

書評:

 

 「万物流転」−人類の思考の流れもこの言葉に始まる。しかし科学的成語を蒸し返すだけでは、夢の主人公を洞窟に誘い込むことは出来まい。確かに宇宙は神の手で造られた完成品なんかではない。我々が危機意識や不安感に襲われるのはそのためだ。問題は有史以来、真実よりも事実の可能性の方へ、人類が眼を開き続けて来たことにある。何はともあれ、技術社会の恩恵に浴した我々にとって、鹿爪らしい哲学よりもSFやポピュラーサイエンスの方が、どれだけ馴染みやすいかわからない。不毛な<何故?>の地にいかに踏み出したかを思い出せばそれでよい。   

 並木伸一郎氏は様々な超常現象に精通したUFO研究家の第一人者である。事あるごとに持前の実証精神をフル稼働、ここ四・五年は専ら、宇宙創成の模擬活動的なNASAの動向に密着取材。本物とガセネタを嗅ぎ分ける勘のよさも、かっての気概も一向に衰えてはいない。まさしく本書は一級のレポートなのだが、「惑星家族」の惰眠を脅かしかねない、驚天動地の中身なのだ。この「MJ-12」極秘プロジェクトの誌上公開は本邦初の試みでもある。さあ、一晩で読みきろう。それと知った地雷原を足早に歩く、この道の聖者の足跡の消えない裡に。

 <地球温暖化は氷河期の先触れ>この有力な学説を手懸りに地球の近未来を透視。もしそうなれば観測史上最大の惨劇となる筈の彗星激突の予兆。超エリートと異星人の「地球廃棄計画」の密約。近傍惑星への移住に際しての集結地「サイトR」の存在。等々・・。本書のメインテーマは人類第4の選択と言われる「プロジェクト・ルシファー」即ち木星太陽化計画だが、精緻な裏づけ捜査によってレポートの信憑性は高い。災厄が閉じ込められたパンドラの箱のように陰謀が渦を捲いている世界、人類は未曾有の困難に直面しているのだ。この太陽系惑星を超知人によるテクノロジーの所産とする著者の見解は、元NASA職員の証言を根拠にしている。謎の死を遂げたその男の名はミルトン・ウィリアム・クーパー。彼は聖書の世界からはみ出した現代人にとって掛替えのない預言者でもあった。「視よ!青ざめた馬あり」の著書で、光の天使・ルシファーの復活に纏わるコンスピラシーセオリーの一部始終を明らかにしている。

 本書の理解に欠かせないのは何を措いても勇気である。社会の殻に閉じ篭る偏狭なものの見方も妨げとなろう。ちなみにアメリカでは、ダーウィンの進化論を補足するものとして、生命の誕生や進化の背景には「知性人の計画」があったとするID説が教科学習に組み込まれそうな動きがあると言う。どうやら一頃世情を賑わせた火星探査機もママゴト遊びではなかったようだ。人類の生存と科学的威信を賭けた「一大仮説」への挑戦、太陽に成り損なった星(=木星)を、堕天使ルシファーの寓話に擬え、衛星イオやエウロパを生息圏の射程に入れた<木星系ミニ惑星の構築>で、今やNASAの司令室は大童なのだ。


 

 

 


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