乾いた土の上では人もまた乾く。人も河童に似て水陸両棲動物である。河童の頭の皿に当たる部分が人の想像力というものだろう。川上さんの流麗なタッチが妖艶な幻術と化す時、その文法は正しい。だから不思議が存在してしまうのだ。
「龍宮」が母型の海産物のヴァリエーション、文法の網に掛けられ陸に引き上げられた主人公達。それにしても、異類・同類の混在等という些かアナーキーで奇妙な観念は何処から来るのか。どろどろに掻き回された鍋の底から、なにやら異形の生き物の気配が創出される。この海と山の交配物のコレクション。やがて、女の蛸壺から這い出し海馬となって海へ還る。
どうやら、専業主婦の厨房の夢とはこういうものらしい。高雅なフランス風・レシピである。
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