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日付:

2004.11.12

タイトル:
青春ピカソ
著者:
岡本太郎
出版社:
新潮社
書評:
 

 鬼面人を驚かす「太陽の塔」のモニュメントで、万博以来、すっかり顔馴染みとなった岡本太郎だが、その破天荒な活躍ぶりの原点はやはりパリである。両親の帰国後も、若干18歳の身空で現地に留まり、ひたすら画業に専念、この孤立無援の花は、やがてピカソ一色に塗潰されることとなる。本書は現代絵画の真髄に触れた一日本人の臨場感溢れる感動の手記。

 実作者にして稀代の論客、この恐れを知らぬエトランゼはまるでパトモス島の殉教者だ。裸一貫で時代の証言を鮮やかに体現してゆく、その厳しい態度は、貪欲で鋭利な刃物のようにエピゴーネンを寄せつけない。

 ピカソとは踏み越えるべき何かである。−ここにこそ彼ならではの切り口の新しさがあった。息も就かせぬ制作現場の密着取材は興奮の坩堝と化し、いつの間にか前代未聞の怪物退治の様相を呈する。

 本物と対峙することを通して孤立から自立へ、−東西の壁は厚く、太陽の塔までの道程は長い。この「青春ピカソ」は、もうひとりの天才画家、岡本太郎誕生の物語でもある。

 

 

 


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