知識偏重の社会が畸形の科学を産み、自然破壊の元凶となった。今や環境汚染は地球規模の問題である。ノンフィクション・ライターとして活躍し海洋学者でもあるレイチェルは誰よりも深くこの問題を掘り下げ、「沈黙の春」を著した。同世代の圧倒的な支持を得た本書は<地球の良心>でもある。
一方、最晩年に書かれたこの小品は、とある海辺で夏の休暇を一緒に過ごした少年たちの思い出が印象深く語られている。「自然と人間」が親子関係のアナロジーとなって詩的に表現され、どのページにも未来への明るいメッセージが溢れている。人は知識ではなく感性を拠り所として生きる。生物から本能を、人の心から感動を根こそぎ奪いかねない文明社会、ほんの少しの間であれ、子供たちを自然のふところに帰してやるのは良いことだ。
「地球の美しさについて深く思いめぐらせる人は、生命の終わりの瞬間まで、生き生きとした精神力をたもちつづけることができるでしょう。」−力強い言葉で締め括られた本書は、美しいカラー写真が地球讃歌に彩りを添えている。
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