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日付:

2005/10/12

タイトル:
詩のすすめ
著者:
吉野 弘
出版社:
思潮社
書評:

 

 コンパクトだが中身は濃い。読後感も爽やかだ。開いたどのページからもよく手入れの行き届いたフラワーガーデンの風が吹いてくる。吉野弘氏と言えばライトヴァースの名手、シャープな視点とユニークで歯切れの良い文体が評判の詩人だ。本書のタイトルはずばり「詩のすすめ」。詩は磨かれてこそ光る感性の受け皿。より広く読まれることで、昨今とみに懸念の深まる詩の失地回復を期待したい。

 著者は生活実感の詩的証人として申し分なしの人である。身近なテーマで詩作する喜びを味わいたい初心者には、待望久しい入門書であり、詩の袋小路でまごついている読者諸兄には、願ってもないアリアドネの糸である。

 「わからなさが詩を書かせる」というのは本当?確かに「わかった振り」では面白さは半減する。半狂乱のじゃじゃ馬でも、しっかり手綱を握る者の眼に風景が活き活きとなるようなものだ。詩の醍醐味は自分自身で発見すべきだろう。

 フランシス・ジャムの一篇の詩に触発されて、我国の代表的な五詩人の詩の世界に遊ぶ。いっとき、実作者の苦心談に花を咲かせたあとは、同じユニークな語り口で石川啄木の純朴な生活感情にも言及、思索の人・高見順論で手際よく締め括られる。肩の凝らない本格的な読書体験となること請合いの好著である。

 

 

 

 


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