「ハーヴェイ・ロードの前提」「囚人のディレンマ」「合成の誤謬」等々、深刻な社会問題に直面すると、決まって引き合いに出される政治経済用語がある。今又、「金満破産」と言う新しい概念が加わった。「山より大きな猪は出ない」はどうやら単なる理窟に過ぎず、自分で自分の腸を食い千切る面妖な怪物が存在するようだ。海水を飲みすぎた鯨の群れが離れ小島のように座礁している、そんな終末論的な光景すら思い浮かぶ。資本主義社会のシステム破壊にこれほどぴったりの言葉もあるまい。
<金満破産、待ったなし>の件の副題が冴える本書は、義憤の人・ベンジャミン・フルフォード氏が渾身の力を籠めて著した会心の作。欧米嫌いの親日家が謀略大国アメリカを向こうに廻し、これは又、何と胸の透く獅子奮迅振りであろう。ドミノ倒しのような貧困化が進む日本の現状を事細かに分析し、具体的で歯切れのよい生き方を指南。巻末では懇切丁寧な資産形成のノウハウまで披露している。カナダ生まれ、南米育ちの46歳。一時期、アマゾンの原生林で暮らしたこともある反文明主義者。博愛主義の父の影響を受けてジャーナリストを志願、ロックフェラー財団の重鎮となったエリートの兄とは全く逆の道を選ぶ。
眼には眼、歯には歯。アングロサクソンの対決精神を日本古来の武士道にリンクさせて、真の文化伝統に根を下ろした日本国を復活させようと、啓蒙活動に専念。戦後の愚民政策の罠から脱出するために、アジア最先進国として海外に門戸を開き、少子化高齢社会には移民受入れ政策で。ハイパーインフレの袋小路に紛れ込み枯葉の山を蹴散らさないために、債権大国として世界のイニシアティブを。等々、どの命題も分り易いものばかりだ。この程、正式に日本に帰化し、その名もベンジャミン古歩道と改めた。青い眼の日本人は「第三の黒船」を前にして、次世代感覚の日本男児を夢見ている。
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