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日付:

2006/09/13

タイトル:
立花隆の正体
著者:

朝倉喬司

出版社:

リム出版新社

書評:
 

 「ひとは見かけどおりのもの」と喝破したシェークしピアは、「自然には鏡を向けよ」とその対処法まで指南。ちなみに、この妄想の塊、「もじゃ毛の猫豚」はどうであろう。シェークスピア劇の道化にはまさにうってつけの人物だが、その鏡像が意外にまともなのは、メディアの鏡面の異常な歪みによる。ほんの少し、肩をずらせば、スケールばかり大きい出鱈目気分の鉢合わせに気づく筈。「知の虚人」を暴く、もう一つの鍵がここにある。

 ノンセクトなジャンル越えに混乱は付き物。「サル学の現在」やら「臨死体験」やら、気違い染みた執念で自説を展開。ところで、文飾が面白いのと文節がおかしいのとではわけが違う。三歳児にペンを持たせるまでもあるまい。肥大化した狂躁観念に押し潰され、幼児退行したのが、立花隆の場合だからである。ここでは三歳児のエネルギーだけが信じるに足る。一昔前は比較的まともと思われた「角栄研究」の誤読に気づき、憤然として著者は筆を起こし本書を著した。

 「角栄憎し」で、矛先も凄まじいタチッパナ氏。ロッキード事件の法解釈をばねに、政界を内側から蝕む超法規的な権力の座に挑む。越山会のヘラクレス対ペンダコのゾンビ。どうやら庶民宰相の人気に軍配が挙がりそうだが、このパフォーマンスとプラクシスの泥仕合、価値観の差し違いはどうなるものでもなかった。赤鬼と青鬼を同士討ちさせる、これは今様、一寸法師の鬼退治のお話。実に良く出来た活劇である。

   いじましい論理破綻の糸玉遊びは、見なかったことにする。

 

 

 


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