写真と文によるコラボレーション・シリーズの一冊。余りにも直裁なこの書き手の記述は、エッセーでも詩でもない。垢抜けのしない小論文というところ。写真の解説ですらない「使いみちのない短文」の恰好のサンプルとはこのことだ。
言わずもがなの世界にしかエンターティナーの存在価値はない。変に理におちる底の浅さが予定調和の世界である。彼はそこに永住権を持っている。
定着、移動、移住。なんのことはない、「旅」はこの三様態の移動にあたり、通過点としての場所が使いみちのない風景なのだそうだ。別に毀れた玩具のように捨てられた訳ではない。むしろ思い出せない風景ほど掛替えのないものとなる。ちなみに作者には移住癖がある。場の固有理論としての作品がそうさせているらしいのだが、ただの職業病だろう。
人生は旅である。人は新天地を求めて旅に出る。これでいいではないか。あのひとはもう帰らない、は歌の文句だが。いつだってそうだ、−生活は後からついてくる。
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