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日付:

 

2009/4/24

タイトル:
論戦力
著者:

筆坂秀世

出版社:

祥伝社

書評:

 

  我国ならではの<論戦論者?>が腕によりをかけて書き表した、議会で舌鋒を奮う諸先生方に就いてのユニークな評定白書。まさに喧々諤々、国益のための喧嘩学の要諦がここにある。小沢政治学の換骨奪胎がお茶の間で人気を博した小泉劇場とは知らなかったけれど、シンプル・イズ・ベストがシンプル・イズ・ビューティとなって展開した政見ワイドショーは今でも記憶に生々しい。当今の世相や制度疲労の政局に活を入れ、与野党の白熱戦で軍配があがるのは現状破壊組だが、用意周到にぶちこわすのは共産党の志位議員、自損行為が見せ場となったのがご存知の元・変人総理。ロシアの民芸品・マトリョーシカ人形ではあるまいし、毛並みの良さを競うだけの阿部・福田・麻生は論外、とこれは又何とも手厳しい。 所所、眼の覚めんばかりの茶々もあり、著者自身がディベートの達人を自負するだけあって、「核心」にふれた「饒舌」はまさに論戦力そのもの、忘れられた名セリフにスポットが当たるや、あんなに面白かったハマコー節もまるで前座のように霞んでしまった。 

 一重度障害児のサクセスストーリーの例を取り上げ、教育の機会均等を訴えて、万感胸に迫るものがあったのは小笠原議員の名演説、彼女も共産党なら、ばりばりの現役で論旨すこぶる明快な志位和夫も生え抜きの同志である。以下はその代表質問からのさわりの部分。

  (志位) 総理が、日雇い派遣の安定のためのガイドラインをつくったとおっしゃいました。「日雇派遣労働者の雇用の安定を図る」とあるんですけれども、安定した日雇い派遣というのはあり得ないんです。日雇い派遣というのは、どんな形であれ究極の不安定労働なんです。こういうものが法律で認められていること自体が私は問題だと思います。

  (志位) 派遣労働は一時的、臨時的場合に限定し、常用労働を代替するものであってはならない、先ほど総理も確認したこの原則が守られているならば、八年も操業を続けている企業でありながら、その労働者の半数が派遣労働者というのはあり得ない話じゃありませんか。これは、あり得ない、おかしな話だと思いませんか。

 うん、中々よろしい、これなら頼りになる。折からの「蟹工船」ブームで若い人たちの間で共産党への関心も高まりつつある。今日もっとも望まれるのはドラマあり、論証もありの世界観でなくて何だろう。いわゆる構造改革こそ日本共産党の伝家の宝刀ではなかったか。著者の言を待つまでもなく、世は挙げて「覚悟」の時代に突入した感がある。 


 

 

 


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