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日付:

 

2009/5/12

タイトル:
和田秀樹の憲法改正論
著者:

和田秀樹

出版社:

原書房

書評:

 軍事大国も一敗地に塗れたあとのやり直しが至難の技だ。そんなあせりが憲法改正に火を点けたのか国論は真二つ。まさに喧々諤々、お寒い限りだが、今や「九条」は事実上つつくところが何もない。自衛隊は先制攻撃をしないというだけで、隅から隅まで武装済み。九条に縛られっ放しの馬鹿さ加減では国際感情を徒に逆撫でするだけだ。国際貢献も時と場合の使い分けが大切、これからはボランテイアが主流となり、外交破綻の埋め合わせに過ぎない戦力は陳腐化するかも知れない。GNPが国際競争力のすべてではない、北欧諸国を見よ、とは著者の持論。立法権の活性化のために即刻地域間格差を是正すべし。そこで憲法改正。時代錯誤の中央集権制を廃止して、道州制を導入すべし。だからこそ憲法改正。右でも左でもない憲法改正の要諦ここに極まれり、と思わず膝を叩きたくなる読者も多いことだろう。これこそまさしく微に入り細に亘る病巣摘出、精神分析医だからこそ出来たみごとな臨床政治学である。

 地方分権による地方の独立、法律も自治体が決める。刑法も然り。殺人の九割は顔見知りの犯行だろうから、余程のマニアでない限り、死刑廃止の穴場を渡り歩く殺人者はいまい。従って、この言説に齟齬はない。だが、待てよ、九割の顔見知り中、どの程度の確率で血を分けた兄弟がいるだろう。もしかして暗澹たる村八分が殺人集団の最後の切り札であるとしたら・・・。スケールばかり大きい出鱈目気分のナショナリズムの方が寧ろ息抜きになるのでは(???) 

 国会審議が捗々しくないのは立証責任が野党側にあるという変梃りんな構造があるからで、これでは角突きあわせる度に短刀の刃先を自分の胸に向けるようなものだ。未だに燻り続ける「永田メール」問題はその典型的な事例である。それは兎も角、何も中央ばかりが楽園ではない。ケース・バイ・ケースの法的規制は必須、ちなみに飲酒運転に関しての不整合性は言語道断、等々。この骨の髄までユニークな著者の、胸の透く憲法改正論、救国の処方箋と言わずして何であろう。日本列島のクリーンアップ作戦はこの人に始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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