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日付:

2006/05/15

タイトル:
ザ・フェミニズム
著者:

上野千鶴子・小倉千加子

出版社:

筑摩書房

書評:

 

 結局、何だったのか解らずじまい。−「それでいいんです。」と、このお二人なら開き直るかもしれない。そもそもの話、「女性学VS男性学」なんて七歳にして席を同じくせずみたいでやりきれないし、第一バツが悪すぎる。男性社会の破れ目から躍り出たのか、その圧力下で爆発したのか、丁々発止の浪速漫才。演題は「ザ・フェミニズム」だ。そのルーツは明治時代ということになろう。「原初、女性は太陽であった。」−これこそ男ののっぴきならぬ願望ではなかろうか。女の頭数だけある女性学、そんなものに大の男が目くじら立てるわけがない。誰もが学問と言わないだけのことだ。

 

  男性に愛されるタイプの女性が国を亡ぼす。こう断言して憚らない上野女史だが、ものの見方は情況次第、と切り返す早業も心得ている。何とも身勝手で陰湿な言説のテンコ盛りだが、−唯、掻き回すだけでは諦観と希望のケジメすら覚束ない。確かに恐怖は弱者の武器、使いこなすには知識がいる。だから「世の女性たちよ、貪欲に学習しよう。」ということにもなるらしい。いやどうも、これではまるで面白半分のパッチ・ワークだ。私が不勉強のせいなのか、それとも男だからか、それにしても、何故、こんな面目もないことになってしまったのか。

 

 男性原理の氷が溶けて、女の泥沼に足を取られるな、男たちよ。そんな警醒の声まで聞き取れるのだから、その気概たるや相当なもの。まして「専業主婦と言う選択を放棄されたら、男なんかひとたまりもないでしょう。」となるや頗る付き。案の定、手厳しいご託宣には尾鰭が付いて、増え続ける熟年離婚の最大の原因は家事・雑事とか。この女カリスマの影に蠢く<残余のもの>と言う女性観が一掃されない限り、この俄かに現実味を持ち始めた問題に関して、即効薬はない。保守本流の我国で最も立ち遅れているのが社会学。それへのブーイングとしてなら、この女性学、何だか長持ちしそうである。

 

 

 

 


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